【読書メモ】『イーロン・マスク』ウォルター・アイザックソン 著

スポンサーリンク

前に読んだスティーブ・ジョブズの伝記がとても面白かったので、同じ著者の『イーロン・マスク』ウォルター・アイザックソン 著、文藝春秋刊(2023/9/13)を読んでみました。

今年も残りわずかですが、今年読んだ本で一番面白かったです!

イーロン・マスクには失礼ながら変わった人というイメージくらいなかったのですが、この本を読んで「こういう社長って、いるんだなぁ」と、その人物を少し理解できたような気がします。

「気が狂いそうな切迫感」を保てと社員に要求し、無理な目標や期限を設定して「シュラバ」を作り出し、次々と乗り越えていく。

その乗り越え方も決してスマートとは言えず、「ノーと言ってはならない」、「工夫で何とかする」など、基本的にはぎりぎりまで追い込んだ社員を総動員して何とかするものです。

すごいのはスペースXでは火星に到達して複数衛星に住むことを、テスラでは持続可能なエネルギーや自動運転、そして人工知能の実現といった壮大な目標を目指して、オールインで仕事にのめり込むところ。

そして周りにも同じことを求める中で、マスクの周りでどのようなタイプが生き残れて、どのようなタイプが去っていったかというのも興味深かったです。そして、残ったとしてそれが幸せだったのかも。

一方でマスクに惹かれてオールインの道を選んでいった者たちが得た報酬について、あまり書かれていなかったのは残念でした。

この他にも興味深い点が多かったので列挙します。

ジョブスとマスクとの対比。どちらも直観的で、デザイン重視だが、ジョブスはマスクほど生産現場に関心が無く、工場もあまり見に行かなかった。

ベゾスとの対比。ベゾスとマスクはある意味似ている。ふたりとも、情熱とイノベーションと意志の力で業界を根底から変えてきた。部下の扱いは手荒だし、なんでもすぐばかやろうと言い出すし、できない理由ばかり探す人がいると腹を立てる。目先の利益を追求せず、未来をみすえて進む。(略)
だが、こと技術開発の方向性はまるで異なる。ベゾスは体系的に進める。モットーはラテン語の”Gradatim Ferociter”、「一歩ずつ、果敢に」だ。対してマスクは直観的である。めちゃくちゃな期日を設定し、リスクを取らなければならなくても構わず、そこに向けて周囲の尻をたたきまくってシュラバを生み出す。
マスクは打ち合わせを何時間も続け、技術的な提案をしたり思いつきの命令を下したりするが、それはどうなんだろうとベゾスはいぶかしげだ。マスクは言うほどモノを知らないし、彼の介入はあまり役に立たないどころか問題を増やすだけのことが多いと、スペースXやテスラにいた人々からも聞いているそうだ。
一方マスクは、ブルーオリジンがスペースXほど成果を挙げられない理由のひとつに、ベゾスが下手の横好きで技術を重視しないこともあると言う。

ゲイツとの対話で、ゲイツがテスラの株を空売りしたことに対してのやり取り、「どうして、気候変動と真剣に戦っていると言いつつ、一番奮闘している会社の足を引っぱるようなことができるんでししょうね」。

ツイッターでのごたごたの内側やトランプとの距離感、ウクライナでのスターリンクの提供についての騒動など。当時はなぜあんなことするのかと思った事柄も、この本を読んでこういう意味だったのかと、気付かされることが多くありました。

もちろん、滅茶苦茶なことも多くしているのですが、一度きりの人生を人類の未来のために完全燃焼するというのも格好いいですね。

コメント