【読書メモ】『変異する資本主義』中野 剛志 著

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こんにちは、lizard.kです。
今年も本ブログをよろしくお願い致します。

正月は自宅で読書や録り溜めてあった映画を見ながらゆっくりと過ごしました。
見た映画は『ノマドランド』と『パラサイト 半地下の家族』です。

どちらも格差や貧困をテーマにした作品で、昨年、一昨年のアカデミー賞で作品賞・監督賞などを受賞しています。『パラサイト 半地下の家族』の展開にはびっくりでしたが、どちらも見て良かったです。閉塞感や停滞感は日本だけではなく、世界共通の現象なんですね。

そして正月に読んだ本は、『変異する資本主義』中野 剛志 著、ダイヤモンド社刊(2021/11/16)です。

私は一昨年、ステファニー・ケルトン教授の『財政赤字の神話』や、L・ランダル・レイ教授の『MMT現代貨幣理論入門』を読んだのがきっかけでMMT(現代貨幣理論)に興味を持ったのですが、このMMTを早い時期から日本に紹介してきたのが中野剛志氏です。

日英米のように自国通貨を発行できる政府(中央政府+中央銀行)の自国通貨建ての国債はデフォルトしないので、変動相場制のもとでは、政府はいくらでも好きなだけ財政支出をすることができる、財源の心配をする必要はない

引用元:ダイヤモンド・オンライン「中野剛志さんに「MMTっておかしくないですか?」と聞いてみた

というのがMMTの核となる主張ですが、『富国と強兵』、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』、『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』等の中野氏の著作では、MMTを日本の現状に当てはめて書かれており大変参考になりました。

中野氏の最新作である『変異する資本主義』にはMMTという言葉こそ出てこないものの、ミハウ・カレツキやアバ・ラーナーらMMTの源流であるポスト・ケインズ派の理論をもとに、長期停滞に陥った現在には積極財政こそが有効だとする結論はこれまでと同じです。

あえてMMTという言葉を使わなかったのは、MMTに強い拒否反応を示す人や、怪しげなイメージを持つ人が多いからかもしれません。昨年も矢野財務次官が文藝春秋2021年11月号に書いた論文が話題になりましたね。

長期停滞を抜け出すための処方箋は出ていると思うのですが、カレツキの言うように「経済理論上可能」であっても、資本家階級が強硬に反対するから「政治的には不可能」というのが、大きな壁となっているようです。

衆院選の際も右派・左派問わずどのメディアもバラマキ批判に徹したというのは異様なものを感じました。

その一方で、バイデン大統領や岸田首相の誕生で、新自由主義と決別して「新しい資本主義」を目指す動きも出てきています。

過去にケインズ主義という「政治的には不可能」とされるパワーシフトをもたらしたものは二度の大戦でしたが、新型コロナのパンデミックや、台頭する中国への警戒心が「戦時」に近い状況を作り出し、今後パワーシフトが進む可能性があると本書には書かれています。

自民党きってのMMT支持者である西田昌司 議員が財政政策検討本部の本部長を務めるなど、期待できる動きもあるので注意して見守っていきたいと思います。

本書の要旨はダイヤモンド・オンラインにも載っていますので、興味のある方は読んでみください。

中野剛志 | 著者ページ
中野剛志の著者紹介と、中野剛志が執筆した掲載中の記事一覧です。

 

今年がどういう年になるか思いを巡らせながら、正月に読むのにピッタリの本でした。

 

 

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