ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧・新版』を読了

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ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧・新版』を、図書館で見つけ借りてきました。前に誰かから薦められて以来、気にかかっていていつか読もうと思っていたのです。

この本は心理学者である筆者が、ナチスの強制収容所に入れらた体験を記したもの。施設に収容される段階、収容所生活そのものの段階、収容所からの解放の段階と、三段階に分けて被収容者の心理的な反応を克明に綴っています。厚い本ではないのですが、読むのに気力が必要なので結構時間がかかってました。

いつ終わるのかも分からない絶望的な収容所生活。非人間的な虐待を受けながら、ただその日を生き残ることだけを考え自己防衛に走る被収容者たち。筆者は心理学者としての視点からそれは当然の反応だとしながらも、以下のように述べているのが心に残りました。

収容所はその人間のどんな本性をあらわにしたかが、内心の決断の結果としてまざまざと見えてくる。つまり、人間はひとりひとり、このような状況にあってもなお、収容所に入れられた自分がそのような精神的な存在になるかについて、なんらかの決断が下せるのだ。典型的な「被収容者」になるか、あるいは収容所にいてもなお人間として踏みとどまり、おのれの尊厳を守る人間になるかは、自分自身が決めることなのだ。

ちなみにこの本は、新版(池田香代子 訳, 2002)が出た後も旧版(霜山徳爾 訳, 1956)が併売されているという点でも独特です。新版は1977年の原著の改訂版を元にしたものだそうで、機会があれば解放直後の1947年に書かれた旧版と読み比べてみたいと思います。

↓こちらは旧版です。

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