『吉田茂の見た夢 独立心なくして国家なし』を読んで

正月休みは父から借りた『吉田茂の見た夢 独立心なくして国家なし』を読んで過ごしました。著者の北康利さんは白洲次郎の本を書いている方ですね。

お恥ずかしい話ですが、吉田茂と言えば占領当時の首相で大磯に屋敷があった(2年前に焼失)とか、麻生元総理のおじいさんというくらいの知識しか無かったので色々と発見がありました。

中でも何度となく繰り返されるライバルの鳩山一郎との対決は凄まじいです。
吉田が「経済復興優先」「軽武装」「日米安保継続」を目指したの対し、鳩山は「日米安保破棄」「早期改憲」「自主的な軍事力整備」「日ソ国交回復」を掲げ激突します。

もちろん吉田も将来的には独立国の完成に向かって国連加盟や自主外交路線を目指していたのですが、当時の日本の状況からまだ時期尚早だと考えたわけです。一方で鳩山は、無謀とも思える目標にまっすぐ突き進んでいく。

この本を読んでようやく、良い悪いは別にして鳩山由紀夫前首相のやろうとしていたことが少し理解出来たような気がしました。政治の世界というのは、くっついたり離れたり、裏切ったり裏切られたり、そして自分が果たせなかった夢を子や孫、後継者に託し受け継がれていく。そういったバックグラウンドを知らないと表面的なことしか分からないんですね。

吉田と鳩山以外にも、石橋湛山、岸信介、池田勇人、佐藤栄作といった歴代の首相や河野一郎など、現代に大きな影響を残した政治家が何人も出てきますので、一読すればニュースを見る目が違ってくること請け合いです。

以下、特に感銘を受けた部分を幾つか引用します。

ポピュリズムに背を向けた男(吉田)とポピュリズムを上手に利用した男(鳩山)。好対照の二人であるが、共通するのは強い信念をもっていたことである。そしてそれは、実現に向けての政治手法が違うだけで、ともに「独立国の完成」を目指すというものだった。
政治家ごとにいろいろな政治スタイルがあってもいいが、おそらく絶対の真理は、実現したい理想の国家像をもたない政治家は首相になってはいけないということだろう。いや、その前に政治家になってはいけないのだ。


政界が信のおけない人間の集まりであるわけでは決してないのだが、”国益を守ることがすべてに優先する”という錦の御旗の存在が、いつも話をややこしくする。外部からは魑魅魍魎の跋扈する場所としか見えない所以である。


政治の世界を眺めていると、いつも「蠱毒(こどく)」のことを思い出す。甕の中に毒を持つ生き物を大量に入れて共食いさせ、最後に生き残ったものが最強の怨念と毒を持った存在になるとする、おどろおどろしい古代中国の呪法だ。
しかし、政治の世界には、これが絶対に必要なのだ。アメリカ大統領にしても、あの熾烈な選挙戦があるからこそ、生き残った人間は強いリーダーになれるのではないだろうか。

 

吉田茂の見た夢 独立心なくして国家なし 吉田茂の見た夢 独立心なくして国家なし
北 康利

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